赤い封筒 – 第4話

 シンイチは真剣な表情を浮かべつつ、先日入手したという調査メモを出してきた。警察の公式資料ではないが、大学時代に起きた“ある事件”について断片的に記録されたものらしい。そこにはミツルの名前は出ていないが、当時学生同士のトラブルが起き、その後当事者の一人が行方不明になったという記述がある。シンイチは慎重な口調で続ける。

「大学時代にあった不幸な事件のことを少し調べたら、どうやら当初は大きな問題になりかけたが、関係者の口裏が合って、あいまいに処理されたらしい。その“当事者の一人”がミツルだった可能性が高い。しかも、おまえもそこに居合わせた形跡があるんじゃないか?」

「俺が? そんな大きな事件に直接関わった記憶はないが……でも、学内で妙にギスギスした時期があったのは覚えてる。それが何か関係してるのかな。」

 アキラは額に手をやりながら必死に思い返す。大学時代、サークルや講義の仲間内で多少のトラブルはあったものの、自分が関与する重大な事件といえば思い当たらない。けれど、もしかすると自分が知らないところでミツルの人生を変えてしまう出来事があったのかもしれないと思うと、胸がざわつく。

「ミツルは当時、詩人として認められたいという欲求が強かった。それなのに上手くいかず、どこかいつも影を背負っていたんだ。俺は正直、そこまで深入りすることなく卒業して、作家を目指してただけだけど……。」

「あるいは、そのことがきっかけでミツルに恨まれているかもしれないぞ。連絡が途絶えたのは、自分の不遇を誰かのせいにしたい気持ちの表れかもしれないし。」

 シンイチの声には、警戒心と同時に一抹の同情もにじむ。もし赤い封筒の差出人がミツル本人だとしたら、なぜ今になって詩を送りつけてきたのか。その失踪の真相は何だったのか。そして、どうして未解決事件にまで絡んでいるような状況になっているのか。考えれば考えるほど不可解だ。

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