風が知っている – 第3話

翌朝、悠斗は紗枝と進輝と共に、次なる場所への旅を計画していた。スケッチブックには、まだ訪れていない場所がいくつか描かれており、その一つに特に興味を引かれていた。それは、村の北にある古い橋の絵だった。悠斗は、この橋が何らかの形で自分の記憶と関連していると感じていた。

三人は、朝のうちに出発し、村の北へと向かった。道中、悠斗は何度もスケッチブックを手に取り、描かれた橋と周囲の風景を確認していた。そして、ついにその橋に到着した時、彼は一瞬息をのんだ。目の前に広がる光景は、スケッチブックに描かれたものと完全に一致していた。

「これだ…」悠斗がつぶやいた。「記憶の中で何度も見た橋だ。でも、どうしてここがこんなにも重要なのか、まだわからない…」

紗枝が悠斗のそばに寄り添いながら言った。「大丈夫、悠斗。ここに来たことで、何か新しい記憶が蘇るかもしれないわ。焦らなくていいのよ。」

進輝は橋の構造を詳しく調べ始めた。「この橋、とても古いけれど、しっかりとした作りだ。昔、この橋が重要な役割を果たしていたのかもしれないな。」

三人は橋を渡り、その先に広がる古い森へと足を進めた。森の中は静かで、時折、鳥の声や小川のせせらぎが聞こえてきた。悠斗は、この自然の中にいると心が落ち着き、何故か安心感を覚えた。

ふと、悠斗の足が止まった。彼の目の前には、小さな清水が湧き出る泉があった。泉の水は透明で、光を受けてきらきらと輝いていた。「ここも覚えている…」悠斗が低い声で言った。「子どもの頃、祖父と一緒にここに来たんだ。」

紗枝と進輝は驚いたが、同時に喜んだ。「それは素晴らしいわ、悠斗!」紗枝が言った。「記憶が少しずつ戻ってきているんだね。」

進輝もうなずき、「この泉や橋が、悠斗の過去にとって重要な場所なんだろう。ここに来て良かった。」

その後、三人は泉の周りでしばらく時間を過ごし、悠斗は幼い日の思い出を紗枝と進輝に語った。彼の話を聞きながら、二人は悠斗が村とどれほど深いつながりを持っているかを改めて感じた。

帰り道、悠斗は新たな決意を胸に秘めていた。自分の記憶を取り戻し、村の秘密を解き明かすこと。そして、自分に与えられた運命を受け入れることだった。

この日の冒険は、悠斗にとって大きな一歩となった。彼の過去と現在が繋がり始め、村人たちとの間にも新たな絆が生まれていた。紗枝と進輝と共に、悠斗はこれからも記憶を辿り、未知の真実に挑んでいくのだった。

第1話 第2話 第3話

タイトルとURLをコピーしました