桜が声を震わせると、じいさんは頷きながら、大きな桐の箱を取り出した。埃をはらうと、箱の中には小さな星形の護符がひとつ。かすかに刻まれた“T”の文字が、夕陽に鋭く光る。
「これが“星の涙”の欠片じゃ。昔、この村では夜空の星がこぼれ落ちたものとして、大切にしておった」
じいさんはそっと手のひらに載せ、桜へ差し伸べた。桜の瞳が潤み、そっと頷く。
「本当に、これが……?」
「うむ。だがこれだけではまだ不完全。今宵、祭りの夜に集まる欠片と合わせ、星の下で結ぶ儀式がある。そなたさんもぜひ来てくだされ」
陽斗がそっと声をかける。
「どうする? 今夜まで荷物置いて、祭りに参加してみないか?」
桜は欠片を胸に当て、しばらく考えたあと小さく微笑んだ。
「……はい。母も、ここで待っていたのなら」



















