星の涙 – 第4話

夕闇が濃くなるころ、村の広場には竹灯籠が揺れ、人々の笑い声が響き渡る。提灯飾りが軒を彩り、子どもたちは星形の紙吹雪に歓声を上げながら駆け回る。桜と陽斗は法被を借り、小さな灯籠を手にした。

「これを高く掲げて、星に願いを託すんじゃよ」

三吉じいさんが教えてくれた通り、桜はそっと竹灯籠の紐を握りしめる。その隙に、じいさんが布袋からもう一つの欠片を取り出し、桜の元へ置いた。

「母からの伝言通り、ここにも欠片があったようじゃな」

桜は瞳を輝かせながら、欠片を見つめた。微かな震えを帯びた息遣いで囁く。

「私……これで二つ目ですね」

陽斗も自分の胸ポケットから、村人に配られた欠片を取り出して見せる。

「俺もこれで集められた。全部合わせれば、母さんの場所が見えてくるのかな」

やがて祭囃子が高まり、人々が中央の円形舞台へ集う。炎に照らされた踊り手たちが軽やかに舞い、星空を映したような法被が揺れる。桜は陽斗と並びながら、胸の布袋をそっと抱いた。

「本祭りは、夜も更けてからじゃ。すべての欠片を持ち寄る者は、星の光で導かれるという伝承じゃよ」

三吉じいさんの声が、静かな夜風に乗って届く。桜は深く息を吸い込み、目を閉じた。

胸に集まった温かな想いを確かめるように、そっと目を開く。星の瞬きの下で、母への想いがひときわ強く燃え上がるのを感じた。祭りの喧騒を背に、桜と陽斗は手を取り合い、静かに夜の冷気を吸い込む。

この村で見つけた二つの欠片が、やがて運命を動かす鍵となる――桜はそう確信し、祭りの本番へ向けて歩みを進めた。

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