星の涙 – 第7話

彼女の声は掠れ、ほんの一瞬だけ言葉を探すようだった。千鶴は静かに微笑み、「あなたを守りたくて、でも結果として傷つけてしまった。許してほしい」と頬に手を当て、桜の顔をそっとなでた。

抱き合ったまま泣き崩れる二人を、陽斗は少し離れて見守る。教会の静寂が母娘の再会を包み込み、遠くで鐘の音がひとつだけ鳴った。その深い余韻が、痛みと幸福を交錯させる。

やがて千鶴はポケットから小さな星形のロケットを取り出した。古びた銀色の表面には、確かに「T」の刻印が彫られている。桜の指先が震えながらロケットを受け取り、そっと開くと、中には二人の幼い写真と、母の文字で「いつもあなたを想う」と書かれた小さな紙片が挟まれていた。

「これを持っていると、あなたがどこにいても見守れる気がしたの」

千鶴は淡い光のなかで、優しくそう呟いた。桜は胸が締めつけられるような想いでロケットを抱きしめる。「ずっと大切にする……」と、震える声で答えた。

陽斗が静かに近づき、二人にそっと微笑みかける。桜は母の手を取り、教会のステンドグラスに映る星々を見上げた。光はその絆を祝福するように、ゆらりと揺れる。母は小さく頷き、桜はそっと優しい声で告げた。

「これからは、ずっと一緒だよね」

千鶴は大きく頷き、桜の肩を抱き寄せた。三人は並んで静かな教会の通路を後にし、扉を開けたとき、外気は新たな始まりを告げるかのようにひんやりと肌を撫でていた。

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