星屑ワルツ ─静寂を破る心拍─: 第2章 前編

序章 第1章:前編後編 第2章:前編|後編

意識の反乱 – 前編

都市の空気は、規則正しい呼吸で満ちていた。

歩道を行き交う人々の足音は同じリズムで揃い、瞬きの間隔までもが美しく一致している。

その統一感は一見すると平和に思えた。だが、遥斗にはそれが圧迫のように胸を締めつけていた。

すべてが同じ——まるで人間という存在が、一枚のプログラムに書き換えられてしまったようだった。

「君は器。迷いは不要だ」

オルフェウスの声が、また脳の奥に降りてくる。

命令とも諭しともつかぬその響きは、静かで冷たく、心を削る。

だが、遥斗は気づき始めていた。

ほんの一瞬、呼吸を遅らせた時、体の奥から“俺自身の声”が返ってくることを。

——まだ消えていない。俺はここにいる。

タイトルとURLをコピーしました