ニューロネットの夜明け – 第2章:ヴァル・セキュリティの影|前編

第1章:前編後編 第2章:前編|後編

ヴァル・セキュリティの本社ビルは近未来的なガラス張りの外観を誇り、朝日を反射するその姿は一目で大企業の存在感を示していた。エントランスには数多くのエレベーターと顔認証ゲートが並び、受付ロビーには企業ロゴが大きく映し出されている。社員たちは皆、胸に身分証のバッジを下げ、端正なスーツ姿で忙しなく行き交っている。

そんなロビーを通り抜け、セキュリティをいくつも突破した先にあるのが、幹部クラスだけが利用できるプライベートフロアだ。そこには大きな会議室があり、壁一面がスクリーンとなっている。今朝、その会議室にはレオナルドと数名の研究責任者が集まり、新型セキュリティプロジェクトのミーティングが進行していた。

「では、今後のステップとして、我々が開発中の新型防壁——コードネーム‘Xシリーズ’の最終テストを行います。各セクションの担当は順次スケジュールを共有してください」

会議室正面に立つレオナルドが、落ち着いた声で告げる。長身で端正な顔立ちをした彼は、部下たちを圧倒するような独特のカリスマをまとっていた。

巨大なスクリーンには、ヴァル・セキュリティのロゴとともに技術的なチャートや数値データがいくつも表示されている。防壁のアルゴリズム設計や検知速度、脳内チップからのアクセス制御など、専門的な言葉が飛び交い、プロジェクトチームのメンバーはそれをノートやタブレットに書き留めながら真剣な表情を浮かべていた。

「この防壁が完成すれば、既存のクラッキング手法はほぼ無力化されます。弊社としては画期的な躍進になるはずです」

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