大空の船 – 第2章 前編

第1章:前編後編 第2章:前編|後編

ゴードンの工房に弟子入りしてから数年が経過した。アレンは朝から晩まで師であるゴードンの下で技術を学び、さまざまな機械の組み立てや修理をこなしながら、空を飛ぶための理論と実践を身につけてきた。最初は道具の使い方や材料の扱い方すらわからなかったが、持ち前の探究心と粘り強さでめきめき腕を上げる。その甲斐あって、アレンは町の人々からも「ゴードンのところの小僧」と呼ばれ、それなりに一目置かれる存在となりつつあった。

「師匠、今日の作業は何からやりましょうか?」

ある日の早朝、アレンはいつものように工房へ飛び込むように入る。すると、ゴードンは黙々とテーブルの上に散らばった歯車や配線を整理していた。いわく、「どうやら新型の動力機関を試しに組み直すところだが、材料が足りん」とのこと。アレンは手元にあったリストをチェックしながら、「じゃあ、町外れの鍛冶屋さんに追加の鋼材を頼んでおきますね」と、早速身の回りの仕事を始める。

そうして働いているうちに日がすっかり高くなり、工房の外からは大工や商人の声が賑やかに聞こえはじめる。アレンがひと息ついて背伸びをしていると、ゴードンがふと手を止めて彼を見やった。

「……お前ももう若くはないな。修理仕事は一通りこなせるようになったし、機械の組み立てもそこそこ器用にやる。大したもんだよ」

「ありがとうございます。でも、まだまだ師匠の足元にも及びません」

素直に答えるアレンに、ゴードンは半ば呆れたように鼻を鳴らす。彼は弟子に対して褒め言葉をかけることが滅多にない。それだけに、このような小さな賞賛でさえアレンの胸をくすぐり、嬉しさがこみ上げた。しかし同時に、ゴードンの目からは微妙な距離感も感じられる。何か言いたげだが、言葉を濁しているのかもしれない。