大空の船 – 第4章 前編

その答えに、アレンは思わず喉を鳴らす。確かにここは市街地も浮遊島も遠く、見渡す限り雲の海が広がる空域だ。人の往来は少ないが、だからこそ「他の船が通る可能性は低いはずだ」と安易に考えるのは危険なのかもしれない。

「おーい、あれを見ろ!」

船首付近にいたライナスが、望遠鏡を片手に大声を上げる。その声に反応して、アレンやラウル、リタも甲板の端まで駆け寄った。

「何が見えたんだ?」

ライナスは口元を引き結び、「あそこ、雲の切れ間の向こうに小さな飛行艇がいる。かなり速いぞ」と指をさす。アレンたちも目を凝らすと、薄い雲越しに確かに人為的な動きが見える。推進装置の蒸気なのか、時折白い煙のようなものが立ち上がっているようだ。

「商船か? こんな高所を航行する船は珍しいよね」

リタが眉をひそめると、ラウルは「雲海で商売する船は聞いたことがないな」と低く呟いた。何か嫌な胸騒ぎを覚えたのか、彼は操縦席へ戻ると、そっとプロペラの出力を調整して船の進路を変えようとする。

しかし遅かった。先方の飛行艇が鋭い軌道でアルバトロスに接近してくるのが、誰の目にも明らかだった。小型の船体が舞うように雲間を滑り抜け、こちらへ向かってくる様子は明らかに友好的なものとは思えない。

「アレン、ここは一旦回避した方がいい!」

ラウルが焦った声を上げるや否や、相手の飛行艇から光る火花が飛び散った。小さな砲撃音が空に響き、甲板の一部が弾け飛ぶ。

「くそっ、砲撃してきやがった!」

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