大空の船 – 第4章 前編

ライナスが思わず唇を噛む。アレンは衝撃でよろけながら甲板に手をつき、急いで仲間に指示を飛ばす。

「みんな伏せろ! リタ、損傷箇所を確認して。ラウル、操舵を最優先で!」

一発目の攻撃を受けただけで、アルバトロスの船体に焦げたような痕が残っているのがわかる。幸いエンジン部や浮力装置には命中しなかったらしいが、油断はできない。相手の次弾がどこに当たるかはまったく予測できなかった。

「なんでいきなり攻撃を……これが噂の空賊なのか?」

リタが船体の隅で修理道具を抱えながら叫ぶ。彼女は何度かこの空域に賊の出没情報があると耳にしたが、まさかこんなにも唐突に襲われるとは思っていなかった。

「おそらくそうだろう。狙いは俺たちの船か、それとも物資か……いずれにせよ、応戦の手段がない以上、逃げるしかない!」

アレンは咄嗟にそう判断し、ラウルに「出力を可能な限り上げて」と指示を出す。アルバトロスは試験飛行用のわずかな防御装置しか積んでおらず、本格的な武装は施していないのだ。

「逃げるにしてもどの方向へ? この雲海の上じゃ隠れ場所なんてないぞ!」

ライナスが苦い表情を浮かべる。とはいえ、一方的に攻撃を受け続けるよりはマシだ。ラウルはエンジンの出力レバーをぐんと押し込み、アルバトロスを急旋回させながら高度を下げはじめる。

「雲の中に潜り込めば、少しは姿を隠せるかもしれない!」

相手の飛行艇は機動力に優れているのか、アルバトロスの動きを追うように雲間を巧みに飛来する。甲板に再び衝撃が走り、今度は船体側面が大きく削れた。リタは真っ青になりながら応急処置道具を抱え、「船の外板が焼けて穴が空きそう……まずいよ、こんなダメージ受け続けたら……」と声を上ずらせる。

「くそ、あと少し……雲まで持ってくれ!」

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