大空の船 – 第6章 前編

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翌朝、古代都市の薄暗い広場には冷たい風が吹き抜けていた。アレンたちはあの書庫跡で得た資料をもとに、夜通し議論を重ねていたが、謎は深まるばかりだ。都市の住民が守り続けてきた「古代の秘術」によって、この巨大な遺跡は浮遊し続けているらしい。しかし、その力を具体的にどう使うかは、住民たちも詳しくは知らないらしく、一部の古代機械は封印されているか、危険とみなされているようだった。

「これを見てくれよ」

リタが持ち出したのは、都市の若者たちから借りたという部品の一部だ。金属と水晶石が組み合わさった不思議な構造をしており、光にかざすとまるで内部に青白い炎がゆらめいているかのように見える。

「もしかしたら、これが都市を浮かせる動力源の一端になっているのかもしれない。こっちの回路図にも似たような記号が書いてあるんだ」

アレンもその図面を覗き込み、「確かに、アルバトロスに応用できれば浮力の安定や推進力をもっと高められるはず」と声を弾ませる。古代技術が本当に動くかはわからないが、うまく活かせれば空賊と対峙する際にも優位に立てるかもしれない。

一方、ラウルは広場の端からそのやり取りを黙って見守っていた。昼間に住民と交わした会話を思い出す。

「危険な装置は触るな。外の者が古代技術を再起動すれば、かつての悲劇が繰り返される」

そう頑なに語った住民の長老が目に浮かぶ。当時の文明は高度な飛行技術だけでなく、それを巡る争いで多くの命を失ったらしい。その忌まわしい記憶を背負った住民たちは、外部から来たアレンたちを全面的に信用してはいない。

「おい、アレン」

ラウルは石造りの柱に寄りかかりながら、修理用の道具を手にしているアレンに声をかける。アレンは小さく返事をして振り返った。

「いいか、あんまり深入りしすぎるなよ。住民が嫌がるのを無理に調べようとすれば、衝突になるかもしれない」

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