大空の船 – 第7章 後編

夕刻が近づき、空がオレンジ色に染まり始めるころ、甲板の見張りをしていたライナスが息を呑むように声を上げる。

「あれだ! あの雲を見ろ! 何か大きな影が……」

一同が視線を凝らすと、二つの雲が交差する隙間に、前回見覚えのある巨大なシルエットが浮かんでいる。ゆっくりとこちらへ向かってきているのは確実だ。前回と同じ、あるいはさらに大きく見えるその生物に、クルーたちは思わずごくりと喉を鳴らす。

「来るぞ……!」

ラウルが短く言葉を発した瞬間、アルバトロスの船体が一気に揺さぶられる。轟音とも言える強烈な風が吹きつけ、先ほどまで緩やかだった気流が荒れ狂う。リタは慌てて装置を押さえ、ライナスはロープを手繰り寄せて体を固定する。アレンは甲板の手すりにしがみつきながら、「落ち着け、まずは攻撃じゃない」とラウルに叫んだ。

確かに、この突風は生物の翼が巻き起こしているだけとも思える。積極的に攻撃する意志を示してはいないようだ。アレンは深呼吸しながら、自分が抱くわずかな期待を確かめていた――彼らはこの生物と“意思疎通”ができるかもしれない。

「リタ、記録装置を回して! あの振動波を捉えられるなら、何らかのパターンを分析できるかも!」

アレンが声を張り上げると、リタは転がるように観測装置へ駆け寄り、スイッチを入れる。前回は不完全だったが、今回の改良版なら、あの“鳴き声”をある程度捉えられる可能性がある。

すると、案の定、空全体を震わせるような低く重い音が響き始めた。まるで雷鳴にも似たその振動が、アルバトロスの甲板を伝い、クルーの身体を震わせる。攻撃ではない。相手が意図的に鳴き声を放っているようにも感じられる。

「うっ……」

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