大空の船 – 第8章 前編

やがて、雲がわずかに切れ、相手の船体がはっきりと見えた。黒い塗装に重厚な装甲、側面に砲門らしきものが設置されている。まごうことなき武装飛行船だ。さらに周囲を複数の小型艇が囲んでいるように見える。遠巻きに視認できる範囲だけで、三隻か四隻は確認できた。

「これは大艦隊の一部かもしれない……連中、こんなところで何をしてる?」

リタが息を飲みながらつぶやく。アレンはこみ上げる焦りを押さえ込もうとしながら、空賊船の動きをじっと観察する。どうやら船団は浮遊島の周囲を巡回しているようにも見えるが、これだけでは判断できない。

「紅蓮のガイウスが関係してるとしたら……奴らが拠点を拡大している可能性が高い。大きな浮遊島を占領して、周辺の交通路を牛耳ろうとしているんだろう」

ラウルの指摘に、一同は唸り声を上げる。これまで何度か空賊の小隊に遭遇し、危うく逃げ延びてきたが、艦隊規模で動かれたら簡単に逃げられないかもしれない。

「どうする、アレン? まだ気づかれてはいないと思うが、積極的に近づいて偵察するのはリスクが大きいな」

ライナスが苦い表情で尋ねる。アレンは唇を噛み締めながら、「このまま引き返すのは簡単だけど、連中が浮遊島を奪っている事実を見逃せば、次に立ち寄る町や島の人たちが危険にさらされる」と思う。

タイトルとURLをコピーしました