結局、アレンは「できる範囲で偵察しよう。奴らの規模や目的がわかれば、住民たちにも警告できる」と決める。ラウルは「わかった。発見されないように高度を変えたり、雲の陰に隠れたりしながら接近してみる」と応じる。リタとライナスも機敏に動き、バラストの調整や視認装置のセットを始めた。
「気をつけて。あの黒い装甲は強力な砲を備えてるかもしれない。あまり近づきすぎれば一瞬で狙い撃ちにされるわ」
リタが警告すると、アレンも大きくうなずく。「わかってる。でも、ここで黙って見過ごせば何も得られない。紅蓮のガイウスの野望を阻止するには、今こそ奴らの正体を掴む時かもしれない」
甲板を吹き抜ける風が、どこか湿り気を帯びはじめる。遠方には黒々とした雲が渦を巻いているのが見える。空の状態も不穏だが、空賊の艦隊の動向はさらに不穏と言える。アレンたちは不安を抱えながらも、次なる行動へ移る準備を進める。やがて、アルバトロスの船首がそっと角度を変え、観察に適した位置まで寄るべくゆっくりと移動を始める。
忍び寄る暗雲が、紅蓮のガイウスの逆襲を告げるかのように、夕刻の光をどんよりと遮っていた。
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