大空の船 – 第8章 後編

「このまま見ているだけでいいのか? せめて内部の構造を探れれば、連中の弱点を突けるかもしれない」

リタが苦悩混じりに提案するが、ライナスは即座に首を振った。

「危険すぎるよ。あそこまで警戒厳重じゃ、近づいた途端に見つかって蜂の巣だ。隙があるとしても、何か陽動を使わなきゃ無理だろうな……」

アレンは黙り込み、考えを巡らせる。自分たちだけでこの要塞を陥落させるのは現実的ではない。しかし、もし紅蓮のガイウスがさらにこの砦を拡張し、周辺の浮遊島や町を支配下に置いてしまえば、空全体が彼らの手に落ちてしまうかもしれない。古代都市の力さえ狙っているとすれば、放置すればするほど事態は悪化する一方だ。

「せめて要塞の外周をぐるりと回って、連中の艦隊の数や配置を確認しよう。そうすれば、今後の作戦を考える材料になる」

アレンがそう提案すると、ラウルは歯がみしながらもうなずく。リタも「なら、私がエンジン出力を微調整するから、できるだけ静かに――あまり雲から出ずに周回しましょう」と言い、ライナスは「見張りは任せろ」と望遠鏡を握りしめる。

アルバトロスは慎重に雲の縁をたどりながら、砦を遠巻きに半周するように移動を開始した。要塞にはときおり巨大な探照灯らしきものが照射され、灰色の雲を白く切り裂いていくが、その光が届かないギリギリのラインでやり過ごす。小型艇の巡回ルートも一定ではないが、風や雲の流れを読みつつ、ラウルが巧みに操縦輪を回す。

「よし、もう少し近づいてみろ。あの側面に大きなゲートらしき構造があるぞ」

ライナスの声に、アレンとリタが身を乗り出す。砦の下部には、何かを格納していると思われる巨大な扉があり、そこに小型艇が出入りしているように見える。武器弾薬や略奪品を運び込んでいるのかもしれない。

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