大空の船 – 第8章 後編

「……あの規模だと、大型戦艦も収容できそうだ。あるいは飛行兵器を隠し持ってるかもしれないね」

リタの推測に、アレンは深くうなずく。紅蓮のガイウスが古代文明の技術を悪用しているという噂が事実なら、この砦で何か恐ろしい装置を作り上げていてもおかしくはない。

ラウルが探照灯の光が近づくタイミングを見計らい、船体を雲の中へ戻そうとする。しかし、突如としてエンジン付近から微かな異音が聞こえた。

「……まずい、機関が騒がしい。こんなときに故障か?」

リタが即座に後部へ駆け寄り、計器類を確認する。

「ごめん、どうやら燃料供給が不安定になってる。古代都市で強化したとはいえ、雲の中での不規則な飛行が負荷をかけてるみたい」

アレンは思わず舌打ちする。小さなトラブルでも発覚すれば一瞬で砲撃を浴びかねない状況だ。今すぐ退避しようにも、急旋回すれば音や煙で場所を特定されるリスクがある。

「大丈夫か、リタ? 何とかならないか?」

ラウルが声を潜めながらも焦りをにじませる。リタは工具ベルトからスパナを取り出し、エンジンルームへ急いだ。

「何とかしてみるわ。できるだけ静かにやるから、ラウルも操縦を安定させて」

その間、ライナスとアレンは雲の隙間から砦を監視し続ける。小型艇の巡回がこちらに気づいた様子は今のところないが、探照灯の動きはやや増えている気がする。

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