大空の船 – 第8章 後編

「怪しまれてるかもしれない。早く離れたいが、リタが修理を終えるまで下手に動けないな……」

ライナスの声にアレンはうなずき、船首を見張る。思ったより雲が薄い。もし砲台側の見張りにでも気づかれれば、一瞬で砲撃が飛んでくるだろう。

ややあってリタが顔を出し、声を押し殺しながら言う。

「大丈夫、応急処置したからエンジンは問題なく動くはず。今のうちに距離を取ろうよ。ここに長居したら本当に捕捉される」

ラウルも「助かった。じゃあ雲の裏を回り込むようにして、視界外へ離脱するぞ」と操縦輪を慎重に回す。皆がホッと小さな息をついた瞬間、甲板を包む空気が妙に張り詰めた。何かが船体を見つけたのか、または風の流れが変わったのか――アレンはすぐに違和感を覚える。

「リタ、ライナス、周囲を見ろ。何か近づいてくるぞ……」

アレンの言葉にライナスが望遠鏡を手に取り、辺りを見回した。すると、雲をかき分けて接近する小型の飛行艇らしき影が、少なくとも二機はある。

「やばい、やっぱり見つかったか? 急いで回頭しよう!」

ライナスの緊張走る声。ラウルは思い切ってエンジン出力を上げ、船体を反転させようとするが、その動きに合わせるかのように雲の向こうから砲撃らしき閃光が見えた。

「くそ、撃ってきたぞ!」

リタが悲鳴に近い声を上げるのと同時に、砲弾が大きく外れたが甲板近くをかすめ、衝撃波でアルバトロスが揺れる。どうやら空賊の警戒艇がこちらを発見したようだ。

「持ちこたえろ! 急旋回だ、ラウル!」

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