大空の船 – 第8章 後編

薄暗い雲を離れてしばらく飛ぶと、空は鮮やかな茜色に溶けはじめる。アルバトロスは何とか砲撃を免れて無事に離脱を果たした。クルーそれぞれが、無人の甲板で小さく息を整え、垂れてくる汗を拭いながら視線を交わす。

「さて……一度、あの砦の近隣住民や交易船に知らせるべきか。それともさらに大きな勢力に協力を要請するべきか」

ラウルはそう提案し、ライナスは「どっちにしても覚悟がいる。下手をすれば、空賊と真っ向から衝突するはめになるし……」と苦い顔をする。

しかしアレンはその言葉を聞いても、瞳に揺るぎない決意を宿したまま口を開いた。

「それでも、俺たちが飛ぶ空を守るために、ここで逃げてばかりじゃいられないよ。紅蓮のガイウスが何を企んでいるか確かめて、空の仲間たちと力を合わせる道を探そう。やるべきことは見えたはずだ」

こうして、苦しい偵察の末に知り得た“空賊の砦”の存在が、アルバトロスの次なる運命を大きく動かそうとしている。夕暮れが深まる中、燃えるような赤い光が甲板を染め、乗組員たちはそれぞれに胸の奥で決意と不安を噛みしめる。闇が訪れる前に、彼らは新たな計画を練り、夜明けに備えるのだ。砦へと続く道は危険に満ちているが、空を渡る自由と仲間たちの絆を守り抜くため、アレンたちは再び挑戦を選び取る。

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