大空の船 – 第8章 後編

アレンが舵を握り替え、ラウルが協力して操縦を補佐する。エンジンを限界近くまで回し、船首を雲の奥へ向ける。二発目の砲撃が飛んできたが、これは雲の中をかすめて外れたらしい。しかし、このまま大艦隊の近くで逃げ回っていては数分で囲まれる可能性がある。

「こんなところで捕まるわけにはいかない……少し強引だが、高度を下げながら雲の下へ潜り込むしかない!」

ラウルはそう叫び、船体を急降下させる。ライナスとリタが必死に甲板の道具や装置を押さえ、アレンは視界を確保しながら煙や火花を警戒する。背後から追うように飛んでくる砲撃が連続して響くが、どうにか雲を盾にする形で回避に成功しているようだ。

「このまま逃げ切れればいいけど、追ってくる奴らがしつこいと厄介だな。艦隊規模じゃなくても、小型艇だけで十分こっちを仕留められる」

リタが焦る声で言うと、アレンは深く息をつきながら、「それでも一瞬の隙を突いて距離を開くしかない。アルバトロスの航行性能を信じよう」と答える。

アルバトロスは急降下を続け、霧のような雲をかき分けて一気に高度を落とす。小型艇の砲撃音が次第に遠ざかるが、まだ油断はできない。どこかで追いつかれる可能性は十分ある。

やがて視界に開けた下層の空が見え、風の流れも落ち着いてきた。ラウルはエンジン出力を再び絞って安定飛行に移行し、周囲をぐるりと見渡す。砲撃や追手の影は今のところ見えない。追撃隊があまり奥深くまで踏み込む気がないか、あるいは別の命令があったのかもしれない。

「どうやら、ひとまずは逃げ切れたかな……」

ライナスが額の汗を拭いながら、半ば呆れたように笑う。アレンも大きく息を吐き出し、リタと顔を見合わせる。たった数分の追撃だったが、心臓が飛び出しそうになるほどの緊迫感だった。

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