大空の船 – 最終章 前編

行動方針が定まると、ラウルは迅速に操縦を再開し、アルバトロスは要塞の下層に回り込むため雲の遮蔽を利用しながらゆっくりと降下を始める。砲台や探照灯がこちらを捉えないようにと神経を尖らせる時間が続く。時折、小型艇が巡回に現れるが、巧みに雲の中へ船を滑り込ませて視線を外す。

ようやく要塞の底面部が見えてきたとき、アレンたちは思わず息をのんだ。そこには巨大な鋼鉄のゲートがあり、明確に大型飛行船の出入り口として造られている。複数の空賊船がそのゲートを通って出入りしている様子が見え、搬入口付近には物資を運ぶ小型機や人影がちらついている。

「やっぱりここだ。船を出入りさせてる以上、セキュリティは高くても死角ができるはずだ」

ライナスが興奮を混じえて言うが、リタは「あのあたりに砲塔が見当たらないのは救いね。でも、警報や歩哨はあるでしょう」と冷静だ。

「タイミングを見計らって強行突破だ。ゲートが完全に閉じてるときは無理だが、今のように物資を運び出してる瞬間に滑り込めば何とかなるかもしれない」

アレンがそう言って地図と目の前の光景を照合する。ゲートは分厚い装甲扉で、開閉には時間がかかりそうだ。警備兵も多いだろうが、砲撃を受ける前にゲートを突っ切ってしまえれば、外壁の砲台からは死角に入る計算だ。問題は、それに気づいて追撃する空賊船をどうかわすか。

「ここしかないな。ラウル、準備はいいか?」

アレンが声をかけると、操縦席のラウルは真顔で頷く。

「機関はフル出力に耐えられる状態だ。リタ、エンジンがオーバーヒートしないよう頼む。ライナスはゲートの開閉を見極めるんだ。タイミングがずれたら……終わりだな」

スリル満点の計画だが、もはやこれ以外の道はない。アレンたちは視線を交わし合い、それぞれが心に決意を宿す。

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