大空の船 – 最終章 前編

やがて、空賊船の一隻がゲートを通って外へ出るのが見えた。今がチャンスだ。ゲートにはまだ大きな開口部が残り、完全に閉まるまでは小型艇などが行き来している。この瞬間が最大の隙と読んだアレンは、大声で命じた。

「行くぞ! 全速前進!」

ラウルが操縦輪を叩くように回し、リタがエンジンの出力を最大付近まで上げる。甲板に強烈な振動が伝わり、アルバトロスが雲間から一気に加速。雲を突き抜けて姿を現した船体に気づいた空賊の見張りが慌ただしく動き、警報のようなサイレンが鳴り響く。

「しまった、やっぱり気づかれたか……!」

ライナスが悔しげに呟く中、アレンは「構うな、そのまま突っ込め!」と声を張り上げる。砲撃体勢に入る暇を与えなければ、この突撃は成立するかもしれない。

しかし、ゲート付近にも軽装の歩哨がいて、何かの装置を操作し始めた気配がある。まるで大型のバリケードでも下りてくるかのようだ。時間との勝負だ。

「ラウル、もっと速度を上げられないか!」

アレンの叫びに、ラウルは操縦輪を握り直して鋭く息を吐く。

「エンジンが悲鳴を上げても構わないか?」

「大丈夫よ、燃焼効率を限界まで引き上げる。耐久の保証はしないけど、やるしかないわ!」

リタが決死の覚悟でスイッチをいくつも操作し、エンジンから高出力の震動が甲板へと響き渡る。甲板が悲鳴を上げるほどの加速を得たアルバトロスは、凄まじい勢いでゲートへ突っ込んでいく。

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