沙耶は音楽を止め、兄の方を振り返った。その顔には、いつもの冷たい軽蔑が浮かんでいた。
「何よ、雄介。今度は何?また勉強で困ってるの?」
彼女の言葉には棘があり、雄介を侮る気持ちが露骨に表れていた。両親もまた、雄介を見て不安げな表情を浮かべている。彼らにとって、雄介は沙耶とは異なり、期待に応えることができない存在だった。
「いや、そうじゃない。今度は違うんだ」
雄介は冷静に言い放ったが、その声には力がこもっていた。沙耶はその変化に気づき、少し驚いた様子で兄を見つめた。
「…何が違うって言うの?」
沙耶は不審そうに尋ねた。雄介は一歩前に出て、彼女に対して強い視線を送り続けた。
「俺は、もう昔の俺じゃない。お前たちが知っているような無力な存在じゃないんだ」

















