雄介は冷たく言い放ち、沙耶に向けて歩み寄った。沙耶は地面に倒れたまま、兄の足音が近づいてくるのを感じた。彼女は、これまで自分が抱いていた兄に対する侮蔑の感情が、一瞬にして恐怖に変わったことを理解した。
「雄介…」
沙耶は恐る恐る兄を見上げた。雄介は彼女に手を差し伸べたが、その目には冷酷な光が宿っていた。
「俺を見下すことは、もう終わりだ。これからは俺がお前たちを支配する」
その言葉に、沙耶はさらに震え上がった。彼女は兄の手を取り、その言葉が本気であることを理解した。これまで家族の中で強い立場に立っていた彼女が、今や兄の力の前に屈服することになるとは思いもよらなかった。
「やめなさい、雄介！」
母親が叫び、二人の間に割って入ろうとしたが、雄介は冷たくそれを拒絶した。彼の中で何かが変わり、家族に対する感情が薄れていくのを感じた。かつては愛情を求めていたが、今はその代わりに力を求めていたのだ。
「俺はもう、お前たちに縛られることはない」
雄介はそう言い放ち、リビングを後にした。彼の中で、力に対する渇望がさらに強まっていくのを感じたが、同時に心の奥底で何かが警告しているような感覚もあった。それが何であるかを理解するにはまだ時間がかかるだろうが、雄介はそれに耳を傾けることはなかった。
彼はただ、さらなる力を求めて歩みを進めるだけだった。
