歌う井戸 – 第肆話

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亡霊のメロディ

夜、櫻村の上空は曇り空。星の光が掠める中、陸は再び蓮の家を訪れた。蓮は彼を庭に案内し、かつての乙女の墓の前で語り始めた。

「乙女の名前は蘭(らん)だった。村に伝わる伝説によれば、彼女は井戸の近くの木で愛する男性との約束を果たして待っていた。しかし、その男性は蘭のために海外へと旅立ち、二度と戻ってこなかった。蘭はその後、村で最も美しい歌声を持つ者として知られ、村人たちに愛されていた。」

蓮の話に耳を傾ける陸。その目は真剣であり、何かを探るような表情を浮かべていた。

「しかし、蘭の歌声には特別な力が宿っていた。それが井戸の魔物を引き寄せる原因となった。魔物は蘭の歌声を奪い、自分のものとしようとした。しかし、蘭はその力で魔物を封印し、村を守った。」

陸は驚きの声を上げた。「蘭はどうやってその力を手に入れたのですか?」

蓮は微笑んだ。「彼女の母親もまた、その特別な歌声を持つ者だった。その歌声は代々、母から娘へと受け継がれてきたのだ。」

陸はその言葉を聞き、自分の母のことを思い出した。彼の母もまた、美しい歌声を持っていた。そして、彼女は突然、村を去っていった。

「母は…蘭の血筋なのですか?」陸が問う。