亡霊の街 – 第4話

ある夕方、佐伯は路上で立ち尽くしている自分にハッと気づいた。どうやってここに来たのかさえ思い出せない。気づけばスマートフォンの画面には、黒い何かを撮影したような写真が映っていた。暗い路地らしき場所を背景に、白くかすんだ人影のようなものが写っているが、誰を撮ったのかもわからない。こんな異常な状況が続くのは明らかにおかしい。まるで“亡霊の街”に一歩踏み込んだあの日から、自分は既に呪いの延長線上に立たされているのだと感じずにはいられなかった。

しかし、だからといって取材を止めれば解放される保証はどこにもない。既に多くの人々が行方不明になっている事実があり、その全員に共通するのが亡霊の街の調査という点である以上、これが偶然の重なりだと思うには無理がある。ならば街の正体を暴き、その怨念を晴らす道を見つけるしかないのではないか——そうした切迫感が、佐伯の恐怖を押しのけ、さらなる行動の原動力となっていた。

部屋に戻った佐伯は、机に向かいノートを開く。ペンを走らせようとするが、頭の片隅で小さな声が聞こえた気がする。「来い……戻ってこい……」そんな誘いの囁きとも、苦痛の呻きともつかない声に神経が逆撫でされる。封鎖区域から一度は逃れた自分が、再びあの街に足を踏み入れざるを得ない運命にあるのだろうか。亡霊たちが導こうとしているのか、それとも破滅へいざなっているのか。答えが見えないまま、佐伯の不安は日々深まっていった。

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