序章:前編|後編 第1章:前編|後編 第2章:前編|後編 第3章:前編|後編
第4章:前編|後編 第5章:前編|後編
究極の探査ミッション
斎藤は、深海の底に広がる未知なる領域へと、探査艇がゆっくりと接近する様子を凝視していた。これまでの調査と連鎖する惨劇、そして狂気の影響を受け、隊員たちは今、究極の探査ミッションを実行する覚悟を固めつつあった。静まり返る艦内の中で、各自が心と体の調子を万全に整え、数多の検査と最終確認を終えたところで、斎藤は改めて口を開いた。
「皆、今日我々は、未知の深海に隠された古代文明の真実を明らかにするため、最後のステップを踏み出す。このミッションこそが、これまでの全ての努力と苦難に意味を与えるものだ。今まで蓄積してきたデータをもとに、正確な進路を決定し、慎重かつ迅速に降下を開始する」と、彼は厳しい口調で宣言した。その眼差しは、過去の悲劇と深海に封じ込められた秘密の重圧に押し潰されそうなほど、真剣そのものだった。
中村は、斎藤の隣に立ち、深呼吸をしながら皆に向けて落ち着いた声で告げた。「私たちは、これまでの調査で数多の異常現象や精神的な乱れに直面してきました。今回のミッションでも、体調だけでなく、精神面でのケアは最優先事項です。各自、自分の健康状態に十分注意を払い、何かおかしなことを感じたら、ただちに報告してください」中村の声には、これまでの数多くの任務で培った冷静さと、隊員たちへの深い思いやりが感じられた。
船内の照明が淡く輝く中、艦載ドローンが深海の闇へと飛び出し、未知の領域の映像をリアルタイムでブリッジに送信し始めた。ディスプレイには、緻密に刻まれた石造りの構造物、神秘的な彫刻、そして無数の記号のような象形文字が浮かび上がり、その全体像は、まるで過去の時代に封印された神殿のような荘厳さを放っていた。
「この映像を見よ。私たちが目にするのは、ただの遺跡ではない。これは、かつて古代の人々が神々に捧げた儀式の痕跡であり、失われた叡智を今、我々に呼び覚ますための扉である」と、ドクター・ローレンスは情熱的に語った。彼の声は、好奇心と狂信的な信念に満ち、深海の呪縛に触れたかのような眼差しでディスプレイを見つめていた。