静かなる救済 – 最終楽章

新たな旅立ち

コンサートの余韻がまだ町に残る中、ユウキは公園のベンチに座り、空を見上げていた。星々がきらめく夜空を見つめながら、彼は自らの音楽の未来に思いを馳せた。

「あの舞台、あの瞬間は、再び音楽と向き合うきっかけになった」と、ユウキは心の中で感じていた。彼は事故以前の自分を取り戻そうとは思わなかった。しかし、ミナとの出会いや町での経験を通じて、新しい形での音楽との関わりを模索したいと考えるようになった。

一方、ミナもまた、自らの人生に大きな変化を感じていた。彼女は言葉を通してのコミュニケーションに不安を抱き続けていたが、ユウキとの関わりや音楽を通じて、自分の中の壁を少しずつ乗り越えることができた。

「ユウキさん、私、もっとたくさんの人と話をしてみたいと思います。」ミナの声には新たな決意が感じられた。



二人は公園のベンチで、互いの新たな旅立ちについて話し合った。ユウキは首都へ戻り、音楽教師として新たな道を探ることを決意。ミナは、町の学校で言語療法を受けながら、自分の言葉で多くの人々とコミュニケーションを取ることを目指すことにした。

別れの日、ユウキとミナは町の駅で再び手を取り合った。ユウキの右手、ミナの左手が温かく絡み合う。二人の目には涙が浮かんでいたが、その涙は感謝と希望に満ちていた。

「また、いつか音楽を通じて出会おうね。」ユウキの言葉に、ミナはうなずいた。

電車が発車する駅のホームで、二人は最後のハグを交わし、それぞれの未来に歩みを進めることとなった。別れた後も、二人の心の中には、共に奏でた美しいメロディが響き続けていた。それは、互いの存在を忘れることのない、かけがえのない思い出として。

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