和菓子の灯がともるとき – 01月02日 後編

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もやもやした空気のまま昼近くになると、由香のスマートフォンが振動した。画面をのぞくと、会社の上司からのメッセージが届いており、「新年明けの初日に出社できないか?」という内容が端的に書かれていた。確かに年末年始の休暇は決まっていたはずだが、急なトラブルや案件が入ったのかもしれない。由香は、「もうすぐ休暇が終わる」と頭では分かっていたものの、父の店のことをじっくり考える前に仕事に呼び戻されるような状況に、焦りと苛立ちを感じる。どう返事をしたものか、即答できずにスマホを握りしめたまま黙りこくってしまった。

さらに追い打ちをかけるように、幼馴染の亮からも連絡が入る。「今度、商店街で新しいプロジェクトを立ち上げるかもしれない。詳しいことはまだ言えないけど、由香にも力を貸してほしい」とのことだ。これまでのイベントとは一味違う、長期的に街を盛り上げるような企画らしく、「もし父さんが店を再開するなら、その和菓子も大きな目玉にできるかもしれない」と熱っぽく語られている。亮の言葉を読むうちに、由香の胸には「この街でやりたいことがある」という思いと、「都会でのキャリアを捨てるのは惜しい」という思いが、一挙にせめぎ合っていくのを感じる。

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