和菓子の灯がともるとき – 12月27日 前編

由香は昨日買った果物を取り出す。父は「ありがたいな。俺もまずは元気にならないとな。店を再開できるようにしっかり治すよ」と言いながら、まるで自分に言い聞かせるようにつぶやく。その言葉に由香はほっとする一方で、「本当に店が再開できるのか?」という不安が頭をもたげる。しかし、その疑問はここでは口にしない。今は父を励ますことが大切だ。

父のベッドの横に椅子を持ってきて腰かけると、ふと幼い頃の記憶がよみがえる。由香がまだ小学生だった頃、父は夜遅くまで店の奥で餡を練ったり、生地をこねたりしていた。寝る前にキッチンの電気がついていると、不思議と安心できて、つい「何してるの?」と覗きに行ったものだ。そのたびに父は「もう寝なさい」と言いながら、少しだけ生地の端をくれたり、甘い匂いを嗅がせてくれたりした。その光景がまざまざと浮かび、由香は懐かしさで胸が熱くなる。

「由香、どうした? ぼんやりして」

父が不思議そうに尋ねる。由香は「ううん、昔のことをちょっと思い出してたの。お父さん、あの頃、毎日夜遅くまで和菓子作りしてたよね」と微笑む。父は少し照れくさそうに「そうだったかな。お前はよく寝るのが遅かったからな。母さんに怒られるぞ」と言って、わずかに笑みを浮かべる。そのやりとりを横で見ていた母も、どこか懐かしそうに目を細めていた。

12月26日 前編後編

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