聖夜に注ぐレクイエム – 12月16日

「早坂怜子さんについて、何か思い当たることはありませんか? 彼女が失踪する前に変わった様子や、何か悩みを抱えているようなことは。」

陸の問いに、真知子は一瞬口ごもったが、やがて重い口を開いた。

「実は、少し気になることがあります。最近、怜子さんが誰かと電話で話しているのを何度か見かけました。その時の彼女は普段とは違って、何かに怯えているような感じでした。」

「誰と話していたか分かりますか?」

「それが分からないんです。でも、その後はいつも『大丈夫』と自分に言い聞かせるように呟いていました。私はあまり深く聞けませんでした。彼女は強い人ですから、きっと自分で解決できると思ってしまって……。」

真知子の言葉に真実味があった。彼女は本当に怜子のことを気にかけていたのだろう。しかし、具体的な情報を引き出せないまま、陸は少しもどかしさを感じた。

一方その頃、新聞記者の片桐悠人は、自宅のデスクに広げた「レクイエム」の楽譜をじっと見つめていた。怜子の失踪がニュースで報じられるや否や、悠人は独自に情報を集め、ホールの関係者から入手した楽譜を手にしていた。

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