聖夜に注ぐレクイエム – 12月20日

「10年前の火災事故の直後、怜子さんをしつこく追いかけていた男性がいました。確か、事故で亡くなった生徒の兄だと聞いたことがあります。その時は大事にはなりませんでしたが、彼女がそのことで苦しんでいたのは事実です。」

陸は真知子の言葉を聞き、すぐに警察のデータベースを調べ始めた。すると、10年前の火災事故で亡くなった生徒の家族の中に、一人の男が浮かび上がった。その名は「篠原圭介」。篠原は当時、妹を事故で失い、学校や関係者に対して激しい怒りを抱いていたという記録が残っていた。

その午後、陸は篠原圭介の居場所を突き止めるため、彼の現在の生活状況を調査し始めた。篠原は現在、郊外の一軒家で暮らしているという情報が得られたため、陸は単独で彼の家を訪れることにした。

郊外の静かな住宅街に佇む家は、古びていて人の気配が薄かった。陸がインターホンを押しても応答はなく、やむを得ず周囲を確認していると、庭の片隅で物音がした。振り返ると、そこにはフードを深く被った男が立っていた。

「篠原圭介さんですね。警察の大沢陸です。少しお話を伺いたい。」

男は一瞬戸惑った様子を見せたが、やがて深いため息をつき、フードを外した。

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