夜明けのペンダント – 序章: 第1話

日が高くなるほど、噂は町中を駆け巡った。『白浜タイムズ』の一面記事は、ペンダントの伝説と高橋発見の経緯を詳細に報じ、見出しには大きくこう躍っている。

伝説の宝石「夜明けのペンダント」出現――再び呪いの悪夢か?

夕暮れまで、航のもとには取材陣や見物人が押し寄せた。だが航自身は言葉少なに、箱ごと自宅の蔵へと持ち帰る。箱を蔵の奥へ運ぶ背中が、薄橙色に染まる西日の中でひときわ小さく見えた。

夜が更け、再び濃い霧が町を覆う。港の波打ち際を見下ろす小高い丘に、一人の探偵が立っていた。私立探偵・秋山玲(あきやまれい)。冷たい海風が彼のコートを揺らし、鋭い瞳が砂浜を凝視している。

「……やはり、何かが動いている」

玲は懐から小型の光学スコープを取り出し、半透明の箱に取り囲まれた蔵の位置を確認した。先刻、漁師が見せつけた異様な光の軌跡が、この町に新たな謎を呼び込んだのだと、彼は直感していた。

草むらを伝ってゆっくりと腰を落とし、静かに丘を降りる。その先には、波音に溶け込むように、箱とペンダントが待っている──そして、その背後に潜む影が、次の悲劇を予感させていた。

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