夜明けのペンダント – 第2章: 第2話

「ここで願いを唱え、命を捧げることでペンダントに力を注ぎ込む。だが、呪いの代償が清算されぬまま時を経ると、力は暴走する」

玲の背後で、航が戸惑い混じりに呟く。

「じゃあ、このペンダントは願いを叶える以上に、人を壊すことしかできないってことか……」

沈黙の中、突如として廊下の奥から重い金属音が響いた。二人は顔を見合わせ、耳を澄ませる。扉の外側から、誰かが近づいてくる足音。「忍び込んだ」と気づかれたのだ。

「急いで、この写真と文書を確保しよう!」

玲は祭壇の脇に散らばる古い写真数枚と、墨のにじんだ羊皮紙の原本を次々にバッグへと押し込む。背後の扉がぎしりと開き、白いローブを纏った松永詩郎が姿を現した。

「探偵か……よく来たな」

詩郎の声は低く、しかし震えていた。彼の手には小さなロウソクが一本だけ灯されている。

「あなたが松永家の末裔……儀式の守護者というわけですね」

玲はゆっくりと身を翻し、詩郎と祭壇の間に立つ。詩郎の目に浮かぶ苦悶は、ただの儀式としてではない深い後悔を示していた。

「このペンダントを封じるために来たのか? だが、その前に見届けなければならないことがある」

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