詩郎は震える手でロウソクをかざし、祭壇の奥へと歩を進める。その先には、壁に貼り付けられた大きな羊皮紙。そこには当時の参加者名が赤いインクで並び、最後の行に「星ノ宮辰巳」と書き足されていた。
「次の犠牲者──この名前が示す通り、誰かがまた死ぬ」
詩郎の声が暗闇に溶ける。玲は名簿を間近で見つめ、指を走らせる。
「……星ノ宮辰巳──宝石商か。彼もペンダントと何らかの契約を交わしたのだろう」
外から再び金属音が聞こえ、詩郎は深く息を吐いて灯を消した。蝋燭の炎が闇に呑まれ、二人は互いにバッグを担ぎ直す。
「急ごう、高橋さん。次の現場は辰巳が最後にいた場所だ」
玲は声を絞り出し、静かに扉へ歩み寄った。波の音が地下室まで響く中、祭壇の名簿に刻まれた次の犠牲者の名だけが、赤いインクで冷たく輝いていた。



















