異世界農業革命 – 第1話

 こうして一樹は、ドルトや村の者に連れられ、村の外れの畑を見せてもらうことになった。そこは見渡す限り、枯れ木と石ころだらけ。根を張るべき土自体がほとんど砂と化しているように見え、植物が生きる気配も薄い。それでも、何本か緑の茎が必死に伸びようとしていたが、その葉は茶色く変色している。あまりに厳しい状況に、一樹は眉をひそめる。

「ここまで酷いとは……。」

 だが、自分が培ってきた知識が活かせるかもしれないと思うと、不思議と胸が高鳴った。たとえ魔力という未知の要素が絡もうとも、植物が育つ仕組みや土壌の改良について学んできたことは無駄にはならないはずだ。非現実的な世界に来てしまったからこそ、逆に活路を見いだせるかもしれない。そんな考えが心を支えてくれる。

「もし、俺にできることがあるなら、協力させてください。ここに来たのも、何かの縁だと思うんです。」

 一樹の言葉に、ドルトは深々と頭を下げた。周囲の村人たちも、不安げなまなざしの中に一縷の希望を滲ませている。栄養失調で苦しんでいる子どもたちを目にすると、その期待に応えたいという気持ちが湧いてくる。自分が元の世界で研究していた数々の手法を、ここで試せないだろうか。魔力の問題は未知数だが、まずは土の状態を確かめ、改善策を探るところから始めてみよう。

 乾いた風が吹き抜ける荒れ地の真ん中で、一樹は固く決意する。この村が抱える問題を解決するヒントが、自分の農業知識にあるかもしれない。見慣れない世界、そして痩せ細った土壌と魔力の謎。まだ何もわからないことばかりだが、一つずつ確かめていくしかない。そして、この村でなら、自分の知識を存分に試せるはずだ――そう信じながら、一樹は村の人々とともに荒地を見つめ続けた。

プロローグ

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