異世界農業革命 – 第6話

 しかし、隊長は鼻であしらう。「貴様らの意見など関係ない。領主様に従うのが当然であり、もし拒めば叛意ありとみなして兵力をもって制圧するだけだ。」

 周囲の村人が反発しかけたとき、一樹がエリアスの肩にそっと手を置く。「領主様が私たちに何を望んでいるのか、具体的な要求を聞かせていただけませんか。もし協力できる部分があれば、話し合いの余地はあると思います。」

 ところが隊長は口角を歪ませて嘲笑し、「ふん、一介の農夫に何ができるというのだ。実際、おまえたちのやり方は異端だという噂もある。これ以上勝手をすれば、領主様のみならず貴族の方々も黙ってはいまい。貴様らの技術を献上し、従属を誓え。それが嫌なら、この村ごと踏み潰すまでだ。」と突き放す。

 一樹は唇を噛むが、今ここで敵対関係を明確にしてしまえば、村に武力が及ぶ恐れが大きい。かといって、すべてを差し出せば今まで築いてきた研究成果や自由を失うばかりか、村を牛耳られたままの状況を甘んじて受けることになるだろう。

 追い打ちをかけるように、領主のみならず上位貴族の派閥も動き出しているとの噂が届く。貴族派の一部は、村の新技術を手中に収めるため、裏で盗賊団や闇商人を操って情報を集め、場合によっては工作員を送り込む準備をしているという話だ。

「ちょっと前まで見向きもされなかったくせに、今度は成長してきたら奪おうとするのか……なんて皮肉な話だ。」

 ドルトが苦々しく呟くと、エリアスも複雑な面持ちでうなずく。「村にとっては、貴族派の陰謀も領主軍の圧力も、いずれも脅威だ。俺たちに打ち勝つだけの軍事力はないし、一方的に服従するわけにもいかない。どうする……?」

 沈鬱な空気の中、一樹がやや強い調子で声を上げた。「今は大きな危険が迫っている。魔力の暴走で、いつ魔物が襲来してもおかしくない。なのに、領主や貴族派がこぞって自分たちの権力を誇示するばかりでは、誰もこの危機を防ぎきれません。だったら、村で防衛体制を強化しつつ、同時に彼らと対等な立場で交渉する道を探すしかない。村が一丸となって、できる限りの備えをしましょう。」

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