異世界農業革命 – 第6話

 そんな矢先、村の外れにある“枯れた森”から怪しい音が響き渡ったという報せが入る。そこはかつての魔力枯渇の象徴のような場所で、長らく人の手も入らず荒れ放題だったが、今では濃い魔力に侵され、魔物が巣くう危険地帯となりつつあるらしい。

「森のほうで、獣のうなり声が聞こえたっていうんだ。いつもと違う、やたら低くて重い声らしい……」

 心配そうに報告する村人に、一樹は表情を引き締める。もしそれが新たに出現した凶暴な魔獣なら、放置しては村に襲来する危険が高い。まだ防衛体制も十分ではないのに、ここで大きな被害を出せばせっかくの豊作が一瞬で奪われかねない。

「ガイ、すぐに若者たちを集めてくれ。森の様子を探りたいが、下手に深追いはしないように。こっちに近づいてきたら、迎撃の準備をするしかない……」

 ガイはうなずきながら、「わかった。俺が先頭に立つ。もし相手が手強い魔獣でも、ここで食い止めてみせるさ」と、頼もしそうに剣の柄を握りしめる。

 そんな最中、領主からの使いが村に到着した。しかも今回は、以前の役人のように少数ではなく、領主軍の兵士を伴った半ば“軍勢”ともいえる規模だ。馬上から見下ろすように村を睥睨する彼らの態度は、はっきりと敵意を含んでいる。

「領主様のお言葉だ。エル・リーフ村は急速に発展しているが、その技術と作物は正当な税を払って管理を受けるべきだ。もし領主の保護下に入らぬなら、力ずくでも制圧する所存である。」

 隊長と思しき男は声高に宣言する。村人の間から恐怖と怒りのざわめきが起こるが、エリアスは静かに前に出る。

「私たちは領主様の支配下にあることを否定しているわけではありません。ただ、これまでのように重い税や抑圧的な管理を受ければ、せっかく育ち始めた作物が失われ、村が壊滅しかねません。どうか話し合いを……」

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