異世界農業革命 – 第6話

 その決意が示されたころ、ガイから急報が届く。「森の中で大型の魔獣が確認された。こいつが動き出せば、村の畑はひとたまりもないだろう!」

 村人たちに緊張が走る。畑が荒らされれば豊作目前の作物はもちろん、人命にも関わる大惨事になる。シルヴィアは慌てて魔力探知の魔法を使い、付近の魔力濃度を調べ始める。「すごい……尋常じゃないほどの魔力反応がある。絶対に近づいてくるはずです。」

 一方、領主軍はあくまでも“村を制圧する”ことしか頭になく、魔物退治に積極的に協力する様子はない。むしろ、「魔物に襲われるなら保護下に入って守ってやろう」という上からの態度を崩さない。貴族派に至ってはさらに厄介で、農業技術の情報を奪おうと暗躍しているため、こちらに手を貸す気配は全くない。

「要するに、俺たちは同時に二つの脅威にさらされているわけだね。村の外からは魔獣が迫り、中からは領主軍や貴族派が技術と支配を狙っている。どちらも簡単には排除できない……。」

 エリアスが重苦しくそう言うと、一樹は落ち着いた声で応じる。「こうなれば、魔力災害を抑える研究を急ぎながら、村独自の防衛体制を整えるしかありません。負けるわけにはいかない。ここで諦めたら、せっかくの豊作も村の未来も、全部失ってしまう。」

 こうしてエル・リーフ村は、かつてない大きな試練の渦中に置かれることとなった。魔力の暴走が引き起こす災害と凶暴化する魔物、さらに領主と貴族派の政治的圧力が重なり、四面楚歌の状態に近づいている。しかし、再生への希望を育み始めたこの村にとって、立ち止まる選択肢はない。仲間たちと知恵を絞り、牙をむく魔獣や権力者たちに対して、自分たちの未来を守り抜く道を模索するしかないのだ。

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