陽斗たちは、古代の伝説に隠された秘密を求め、辺境にひっそりと佇む石造りの遺跡へと足を運んだ。周囲には、時の風化を感じさせる苔むした壁や、朽ち果てた彫像が並び、かつての偉大な文明の残滓を今に伝えている。遺跡の入口は、重厚な石扉で守られており、その表面には不思議な文様と文字が刻まれていた。エリナは杖を握りながら、古文書と照らし合わせるようにその碑文を見つめ、静かに呟いた。
「この碑文……『虚無の王』と『選ばれし者』の伝承が刻まれている。これが、我々が求める鍵かもしれませんね。」
ミカエルは、古びた地図を広げながら答えた。「伝説によれば、かつてこの地には選ばれし者が住み、虚無の王を封じ込めたという。もしこの碑文が真実なら、私たちはその足跡を辿っているということだ。」
騎士ロレンスは、周囲の警戒を怠らず、剣を携えながら仲間たちを見守っていた。「だが、ここはただの遺跡ではない。罠や仕掛けが多数存在するはずだ。慎重に進むべきだな。」
一行は慎重に石扉を押し開け、薄暗い通路へと足を踏み入れた。通路内は、長い年月の間に埃が積もり、かすかな光が壁の隙間から漏れていた。陽斗は、内に秘めた領域能力の微かな感覚を頼りに、進むべき道を確かめるように周囲を見回す。すると、突然、床に敷かれた複雑な模様が輝き出し、まるで彼の存在に反応するかのように微妙な振動を発した。
「これは……仕掛けだな。慎重に歩こう。」
ロレンスの声に応えるように、エリナが杖先で模様に触れた。
「この模様は、特定の順序で踏むことを要求しているようです。前に進むためには、知恵が試されているのでしょう。」