「ガルド!」
ガルドが祭壇へ突進。仮面の男は刀を抜き応じるが、大剣との一撃で地面に刃がめり込み、腕が痺れて膝をつく。
私は祭壇から帳簿を奪い返し、端末と照合――ページの隅に新たな転送コードが見えた。『GD-00』。
「トップナンバー……黒幕は“灰色宰相”本人か」
鎖骨を押さえた仮面の男が呻く。
「貴様らごとき地方支部の駒が……!」
私は首を振る。
「もう地方支部の問題じゃない。数字は嘘をつかない。そして真実は必ず帳簿に残る」
ティリアが矢を番え、男は撤退の符を切り裂いて闇へ消えた。
夜明け。塔を出ると、東の空が紫から黄金へ染まりかけていた。
リリィの操る合図灯が遠く川面で瞬き、老船頭の船影がこちらへ向かってくる。
私は帳簿を胸に抱え、深呼吸した。
「証拠は守った。だが黒幕はまだ逃げてる」
「なら追うまでよ」ティリアが微笑む。
「腹が減った。王都に着いたら朝飯抜きは許さないぞ」ガルドが笑う。
私は頷き、セルの海を新たに開く。
次の目的地は王都南門、そして財務局第四課。数字の刃で切り込む準備は整った。
早朝の風が頬を冷やし、決意を鮮やかに研ぎ澄ます――異世界の窓口係は、今日も戦場を往く。


















