異世界冒険者ギルドの日常 – 第1章:後編

第1章: 前編|後編

 昼休憩が終わると同時に、カウンター前が再びざわめき始めた。

 冒険者たちが寄せ集めた戦利品の匂い、磨き上げた武具がきらめく金属光、そして何より、これから稼ごうという熱気が渦巻いている。

 その最前列に、一本の長弓を肩にかけたエルフの少女が立っていた。薄桃色の髪を高く結い、翡翠色の瞳がくるりとこちらを向く。

「受付、今日こそはまともに処理してよね。前回は報酬計算が一時間も遅れたんだから」

 傍らでは、大柄な獣人の青年が朗らかに笑っている。灰色の耳と尻尾を揺らし、片手に巨大な剣、もう片手には紙袋――中身はパンらしい。

「まあまあ、ティリア。こいつは新しい窓口らしいぜ? 試運転ってことで!」

「ガルド。あなたが庇うと、かえって胡散臭く聞こえるわ」

 言外の棘にひるみかけるも、悠斗はすかさず笑顔で一礼した。

「初めまして、ユウトと申します。ご依頼は『薬草採取・初級』でお間違いないでしょうか?」

「ええ。〈ヒースヒール〉五十束を納品よ」

 ティリアが弓を背中に回し、革袋を差し出す。

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