「数字の証言者はどなた?」
「受付係、深山悠斗です」
私が帳簿を差し出すと、彼女は一ページめくり、端末へ素早く転記する。
唇がかすかに歪む。
「第四課、予想以上に深いわね。灰色宰相の影が後ろで微笑んでる」
「裏付けは十分です。転送経路の全ログ、魔紋炉暴走の因果関係も解析済みです」
私は端末を提示し、セルのグラフを拡大した。水面下の無許可支出が時系列で波形を描き、そのピークが魔族教団の活動日と重なる。
「見事よ。あなたを臨時監査補佐官として招聘するわ。内部監査直行ルートを確保するため、あなたの解析が必要」
思わず肩が跳ねた。窓口係が監査補佐官――だが驚く暇はない。
その時、応接室の硝子窓が割れ、黒い煙弾が転がり込んだ。
「伏せろ!」
ガルドがクラリスとマリエルを庇い、私は帳簿を抱え反射的に机の下へ。煙の中に紫光。影衛兵より上位、第四課直属エリミネーター部隊〈グレイ・ファング〉。
ティリアが弾幕のように矢を放つが、暗器の鎖鎌が矢を払い、床を抉って迫る。
「通すか!」
ガルドの大剣が鎖を弾き、鎖鎌が天井に突き刺さる。私は机を蹴って横倒しにし、盾がわりに前へ滑らせた。


















