リリィは鍛冶箱から展開式カタパルトを投げ、机を飛び越えようとした敵を反転させて壁へ激突させる。
九十五%。
最後の敵が私へ突進。私は帳簿で盾を作り、肩で受け止めつつ端末を頭上に掲げる。
「送信完了!!」
端末が青く点滅し、データが王国監査院中央炉――中枢サーバへコピーされた。
残った敵影は撤退符を切って退いた。硝子の破片と煙の匂いだけが部屋に残る。
私は帳簿を抱えたまま床にへたり込み、血で濡れたガルドの腕を見た。
「……ごめん」
「気にすんな。数字は無傷だろ?」
獣人の笑顔は痛みを隠せず震えていたが、確かな勝利の輝きを帯びていた。
マリエルがぼやき笑いを漏らす。
「あなたたち、本当に窓口係と新人なの? 規格外すぎて監査基準が吹き飛ぶわ」
クラリスは肩を竦め、私の背を軽く叩く。
「次は“中央監査特別審理”よ。灰色宰相が直接動いてくるわね。でも……あなたの数字があれば勝てるわ」
監査院の非常ベルがようやく鳴り、衛兵が駆け込んできた。
私は立ち上がって深呼吸し、割れた窓から覗く王都の青空を見上げる。
受付カウンターから始まった戦いは、とうとう王国の心臓部へ。
数字で世界を整えるその日まで、私たちは止まらない――そう、窓口は今日も戦場だ。


















