異世界冒険者ギルドの日常 – 第10章:前編

 結界ゲートを突破する許可を得るため、私たちは祭壇防衛の司令塔――世界樹祭財務局本部テントへ赴いた。

 そこに立ちはだかったのは白装束の青年補佐官ロジェ。

 「臨時監査員であっても、祭壇基幹へは立入禁止だ」

 「偽通貨波形が再発しています。残高が閾値を超えれば結界自体が会計爆縮を起こす!」

 私がグラフを突きつけると、彼は迷いを見せ、それでも首を振った。

 「確証が必要だ。帳票一本では上層部を説得できない」

 その瞬間、祭壇の黄金炉から紫電が走り、結界に亀裂が入った。空気が唸りを上げ、見物人が悲鳴を上げて後退する。

 ロジェは蒼ざめ、ついに通行印章を差し出した。

 「監査特権で行け! 私は上層に制止命令を出す!」

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