異世界冒険者ギルドの日常 – 第10章:前編

 私はセルを新規作成。盾に映る数字をリアルタイムで読み取り、互換レイヤーを生成するマクロを書いた。

 =CONVERT(γ式,標準式)

 コンバート関数実行と同時に、杖を振り上げた黒ローブの背後で盾壁が緑から青へ色相シフト。

 「いまだ!」

 ティリアの矢が貫き、ガルドの突撃で盾が粉砕。リリィの弾が直撃し、黒ローブは吹き飛んだ。

 しかし中央の頭巾が嘲笑し、世界樹枝の裂け目に黄金貨を注ぎ込む。

 「枝を塞いでも幹に“偽芽”を植えれば再生産だ!」

 裂け目は金の芽に覆われ、その度に炉心が再び鼓動を取り戻す。

 「無限芽生え……際限がないわ!」

 ティリアが歯噛みした瞬間、私はふと頭に浮かぶ。――芽生えは“資産計上前の在庫”。ならば課税対象だ。

 私は世界樹枝を指し、セルで“未実現資産課税”を宣言する関数を入力。

 =IF(資産=未実現,税率:=100%)

 黄金芽が赤熱し、たちまち灰色の朽木へ変わって落ちた。炉心の鼓動が止まる。

 黒頭巾は絶叫し逃走符を切るが、ティリアの矢が符を貫き、光が霧散。ガルドが斬撃で鎖を断ち、リリィが工具で腕を拘束した。

 世界樹枝の亀裂はゆっくり閉じ、祭壇を覆った結界が清澄な碧に戻る。魔力計測石は安定値を示し、外周で待機していた祭礼官たちが安堵の溜息をついた。

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