異世界冒険者ギルドの日常 – 第11章:前編

 「世界樹祭の偽通貨と同系統かもしれない」

 リリィは即座に地図を広げ、雨筋を拭いながら距離と補給線を計算。

 「ベル=フェルドは北の氷河地帯。冬前の備蓄が消えると、村が凍え死ぬ」

 ガルドは大剣を背負い直す。

 「物流が死ねば肉も流れねぇ。行くぞ!」

 クラリス支部長は報告書に目を通し終えると真顔になった。

「本部はまだ調査班を出せない。世界樹祭後の棚卸しで手一杯。でも北の備蓄がこの速度で失われれば、来期全土が赤字になるわ」

 ユウトはカウンターのベルを鳴らし、応対窓口をセルマに任せると帳簿を携え仲間の前へ立つ。

 「数字が居場所を示してる。空白領収書=未記載の収入。ならば“記載すれば存在が確定”――捕まえられる」

 ティリアが弓を握り、リリィが工具を締める。

 「準備は十分。私たち、次の戦場へ行くだけね」

 雨脚が強まる外で、カミルが門番の下で荷造りを手伝っていた。

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