「僕も同行を!」
「まだ君は研修中だ」ユウトは首を振るが、財布から銀貨を一枚取り出し手渡した。
「これは“空白領収書”じゃない。君がトリスに残って、在庫が消えてないか監視してくれ」
少年は拳を握り、銀貨を大事に胸へしまった。
雨の中、馬車が北門を抜ける。車輪が水たまりをたたくたび、桜色チェインメイルが淡い虹を映した。
ユウトは旅程シートを確認しながら呟く。
「次の決算は空白を埋める帳簿。数字を“有”にして笑顔を残す。僕たちの仕事、まだ続くね」
ティリアは小さく笑い、矢筒を撫でる。
「窓口が戦場なら、道中だって受付カウンターよ」
灰色の空の向こうで、北風が冷たい帳簿を開こうとしていた。
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