星降る夜の奇跡 – 第2話

それでも、人見知りなのか、それとも恥ずかしがり屋なのか、頬が少し赤らんでいる彼の表情にサヤは思わず笑みをこぼした。都会ではなかなか出会えないタイプの、素朴な青年だと感じられたからだ。

「あの、わたし、昨日この村に引っ越してきたばかりなんです。山本サヤっていいます。川のせせらぎが聞こえたから散歩してみようと思ったら、ここに着いちゃって。勝手に覗いちゃってごめんね」

「サヤ……さん、か。俺はユウタ。生まれも育ちもここで、ずっとこの村に住んでるんだ」

ユウタと名乗った彼は、ようやく少し穏やかになった表情で答えたが、どこか照れ隠しのようなぎこちなさがある。サヤは彼のノートが気になりつつも、あまり立ち入った質問をするのはよくないかもしれないと思い、とりあえず場所を借りたお礼だけは伝えておこうと思った。

「川がすごくきれいね。こんな静かなところがあるなんて、ちょっと感動しちゃった」

「まあ、山の奥だからね。水が澄んでて当たり前といえば当たり前なんだけど……。都会の人からすると、特別に見えるのかな」

「そうかもしれない。昨日見た夜空もすごかったんだよ。星があんなにたくさんあるなんて、知らなかった」

話をしながら、ユウタの手元にあるノートの表紙に、星座のイラストが小さく書かれているのを見つける。サヤは星図のようなものだと確信したが、どんなことをメモしているんだろうと気になって仕方がない。ちらりと視線を向けると、ユウタもそれに気づいたのか、「これ、星の観察記録とか、星座のこととか書いてあるんだ」と、自分から口を開いてくれた。

「星の観察記録……ってことは、趣味で天体を見てるの? もしかして、昔から星が好きだったり?」

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