星降る夜の奇跡 – 第2話

「じゃあ、また今度。星空観察、よろしくね」

「うん。こちらこそ。また川で会うかもしれないけど、そのときはよろしく」

二人は小さく手を振り合い、それぞれの道へと戻っていく。サヤは古民家へ向かいながら、胸の中に広がる奇妙な高揚感を覚えていた。ユウタと話しているうちに、自分がこの村に引っ越してきた理由がさらに明確になったような気がする。都会の喧騒から離れ、静かな暮らしの中で、何か大切なことを見つけたい。そんな漠然とした思いに、もしかしたら星空が導いてくれるかもしれないのだ。

家に戻ったサヤは、今日あった出来事を思い返しながら食事の支度をする。ミツエから教わった地元の野菜をさっそく炒めてみると、思いのほか良い香りが漂ってきた。新鮮な素材を使うと、こんなにも味が違うのかと、改めてこの土地の力強さを感じる。「ユウタか……」とつぶやきながら、あの少年のあどけない表情と、星の話をしていたときの真剣な横顔を思い出した。今度一緒に行くという展望台で、いったいどんな星空に出会えるのだろう。彼の話していた「星々が持つ秘密」という言葉が頭から離れない。まるで夜空を見上げることで、まだ知らない物語の世界へ踏み込んでいけるような期待で胸が膨らんでいく。

外はまだ明るさが残り、遠くの山々がオレンジ色に染まる時間帯。やがて日が沈んだら、またあの静かな闇が訪れ、星たちが悠然と瞬き始めるのだろう。サヤはユウタに誘われた星空観察がどんなものかを想像しながら、軽く頬を緩ませた。まだ見ぬ星の世界への扉は、思ったよりも近くにあるのかもしれない。

第1話

タイトルとURLをコピーしました