星降る夜の奇跡 – 第2話

サヤがそう言うと、ユウタの表情がわずかに明るくなったように見えた。「じゃあ、今度一緒に行ってみる? 山の展望台に登れば、街灯が少ないから星がとてもよく見えるんだ」

「展望台? そんな場所があるの?」

「うん。村はずれにあるんだけど、夜だと暗くてちょっと危ないから、懐中電灯は必須かな……。まあ、俺は慣れてるから案内できる。もし時間があれば……どう?」

これが、あまり人に自分から声をかけるタイプではなさそうなユウタにとっては、かなりの勇気を出した誘いなのだと、サヤにもすぐにわかった。彼の瞳には、どこか不安と期待が入り混じったような揺らぎがある。「ぜひ行ってみたい!」とサヤは即答した。実際、昨夜の星空を見ただけでも胸がときめいたくらいなのだから、本格的な星の観察ができるならぜひ体験したいと思ったのだ。

「よかった。じゃあ、決まりだね。今度、天気が良くて、月があまり明るくない日にしよう。日が暮れてから行くことになるから、もし怖くなったら言ってね」

「ありがとう。なんだか楽しみだなあ。私も夜は暗くて少し怖いけど、せっかくここに来たんだし、そんな体験めったにできないしね」

二人はそれからしばらく、お互いのことを少しだけ話し合った。ユウタがこの村で生まれ育ったこと、星座図鑑を集めるのが趣味なこと、そしてサヤが都会で仕事をしていたことや、なぜこの村に来ようと思ったかを簡単に伝えると、ユウタはしきりに「都会なんて、全然想像つかないなあ」と言っていた。どちらも違う環境で育ってきたはずなのに、こうして穏やかに話ができることが不思議な縁にも思えた。

少し風が強くなってきたようで、川沿いの空気がひんやりと肌を刺す。名残惜しさを感じながらも、サヤは「そろそろ帰らないと」と腰を上げる。ユウタもノートを閉じて、立ち上がった。

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